2022年以降、米国のインフレは市場予想を上回るペースでしか低下せず、直近数カ月も3%台にとどまっている。議論はFRBの利上げに集中しがちだが、より注目すべきは、過去30年間米国の物価を抑えてきた仕組みがなぜ突然機能しなくなったかだ。
インフレを分解すると、少なくとも三つの要因が同時に作用している。政府の借り入れが金利の下限を押し上げ、関税が安価な商品を締め出し、人口構造を背景に労働コストが上昇し続けている。これらが噛み合い、毎月の物価統計に表れている。
財政と信用:最大の借り手は政府自身
米連邦債務は40兆ドルを超え、年間の利払い費だけで約1兆ドルに達する。政府は債券市場最大の借り手として資金を吸い上げ続け、金利の下限を押し上げている。企業の資金調達コストも上がり、そのコストは最終的に商品やサービスの価格に転嫁される。
同時に、大手クラウド事業者の設備投資計画は3800億ドルから7100億ドル超へと引き上げられた。議会の承認は不要で、企業が自ら借り入れた資金だ。さらに注目すべきは債務の連鎖である。米メディアによれば、米テック大手9社の背後には約3兆ドルの潜在債務がある。借金して計算資源を買い、それを貸し出し、リース契約を担保にまた借りる。対象が高価になるほど担保が増え、連鎖が長くなる。どこか一環で価格が下落すれば、連鎖全体が再評価を迫られる。
関税と賃金:コストは巡り巡って棚に戻る
関税の効果は直接的だ。安価な商品を締め出すため、企業は高いコストを棚に転嫁するしかない。賃金は物価に追いつこうとし、物価は再び賃金に追いつく。巡り巡って最後に請求書を払うのは消費者である。
労働コストはインフレの中で最も粘着性の高い部分だ。製造業の総合人件費は、中国が時給6〜8ドル、米国が35〜40ドル、ドイツが55〜65ドル相当。3〜6倍の賃金差は政策で埋められるものではなく、教育・人口・為替が数十年かけて築いた構造的格差だ。賃金は上がっても下がらず、人手は足りず高くつくため、サービス価格は毎年上がるしかない。
古い契約の失効:技術が追いつけば価格は一次元に
過去30年の根底にあった契約はこうだ。米国が技術とブランドで独占利益を得て、中国が労働力と資源で対価を得る。米国は安価な商品と低インフレを、中国は受注と雇用を得て、ドルが米国債購入に還流する。米国の財政赤字は中国の輸出受注に対応し、中国の過剰生産能力は米国の過去20年の低インフレの恩恵に対応していた。
この循環が30年回った前提は、ドルが基軸通貨であることだ。米国が紙幣を刷れば世界が受け取り、米国が借りれば世界が買う。だから赤字は年々拡大しても即座に破綻せず、インフレの一部を外に輸出できた。誰かが受け取りを拒むまで、という条件付きで。
もう一つの暗黙の前提は、中国が永遠に追いつけないということだった。この前提が崩れつつある。技術が追いつかれれば、独占利益は一瞬でゼロになる。米国の高利益・高福祉・高賃金は「自分にあり他人にない」ものの上に成り立っていた。相手も持てば、価格は誰のコストが低いかという一次元だけになる。技術が追いついた瞬間が、価格の底値になる。
太陽光発電がその例だ。生産能力の8割が中国にあり、モジュール価格は3年で3分の2下落。2026年上半期には大手5社の合計損失が148億元を超えた。世界最先端の技術がもたらすのは暴利ではなく、より激しい価格競争だ。半導体も同様で、2026年1〜7月の集積回路輸出は2160億ドル、前年同期比99.5%増となり、7カ月で前年1年分を超えた。
抑制的な判断
米国のインフレが下がらないのは、金融政策だけの問題ではない。財政拡張、関税障壁、労働力構造、そして国際分業の契約が同時に変わりつつある結果だ。利上げは需要を抑えられても、政府の借り入れを止められず、3〜6倍の賃金差も埋められない。
本当の問題は、「自分にあり他人にない」という前提が成立しなくなったとき、米国は30年回してきた低インフレの仕組みを何で置き換えるのか、である。次のFOMCの結果より、この問いの方が注視に値する。
出典:知乎 https://zhuanlan.zhihu.com/p/2089896770952237320?utm_medium=openapi_platform&utm_source=b38f6831b176
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